海の女王は中学生~おしゃべりティアラと海底王国のひみつ~

 同じ頃、みゆは巨人の内部、冷たい炎の結晶に閉じ込められていた。

 とても寒くて心細い。

 そんな夢の中で、みゆはガラちゃんを探し求めていた。

 「ガラちゃんを助けなきゃ……。どこ……?どこにいるのガラちゃん……」

 夢を見続けるみゆに、アデラールが必死に語りかける。

 「みゆ!僕だよ、アデラールだよ!」

 しかし、みゆは目を覚まさない。

 「ごめんよ、みゆ。アベルだなんて、うそをついて……。それに5年前の約束も守れなくて」

 アデラールは眠り続けるみゆに、語り続けた。

 「僕はあの日、約束した浜辺に行こうとしたんだ。でも、城を抜け出すところをあの女王に見つかって……。城の地下牢に閉じ込められて、やっと外に出られた時にはもうキミはいなくなってて……」

 アデラールはここまで話すと、涙をこらえる。

 「遅くなったけど、キミに会いにきたよ!ずっと、会いたかったんだ!みゆを取り戻すまでは、僕はここから帰らない!!」

 みゆの閉じたまぶたが、ピクリと動いた。

 「僕だけじゃない。ドニもクレマン隊長も、あの口うるさいノエルだって、みんなみゆを待っている!」

 アデラールは両手のこぶしをにぎりしめた。

 「だから、目を覚ましてよ!みゆ!!」

 アデラールは、力いっぱいに叫んだ。

 その時みゆのまぶたが、少しだけ動いた。

 「がんばれ、みゆ!もうちょっとだ!」
 「ア、デラール……」

 みゆはうっすらと、目を開けた。

 そして、弱々しく右手をアデラールに伸ばした。

 「大丈夫、僕はここだよ」

 アデラールとみゆがお互いに手を伸ばして、手のひらが結晶越しに重なった。

 次の瞬間、炎の結晶はぱりんと音を立てて砕け散っていった。

 「アデラール……なの?すごくお兄さんになったね」
 「みゆ……。この姿をどうしても、キミに見てもらいたかったんだ」

 みゆとアデラールは顔を見合わせて、うれしそうに笑い合った。

 「私ね。ずっと夢を見ていたの。夢の中でガラちゃんが檻に入れられて困ってた。だから、助けに行かなくちゃ!」

 うなずいて、手を取り合うみゆとアデラール。

 2人はお互いの手をを、ぎゅっとにぎった。

 すると、ゆっくりと巨人の姿が変わってゆく。

 赤い炎は白く輝きながら小さくなっていく。

 そして巨人の背中には真っ白で大きな翼が2枚生えてきた。

 女神像のように美しい姿になった巨人は、翼を広げると、ふわりと空へ舞い上がる。

 「ガラちゃんの居場所はわかるのかい?」
 「うん!ガラちゃんが助けを呼んでる声がするの!こっちよ!」

 アデラールが不思議に思って尋ねると、みゆは迷いなく答えた。

 翼のある巨人はガラちゃん目指して、一気に空を飛んだ。