「ガラちゃんに教わった通りに言ったら、割りとすんなりお城から出してくれたね、ノエル」
 「うん、お召し替えは大変だったけどね」

 みゆとガラちゃんはのんきに話しながら、城からの小道を歩いていた。

 「『魔物や怪人が出るから警備の兵士を付けます!』って言われたけど、断っちゃった」
 「うん、ガラちゃんと杖があれば無敵だよ!」
 「そうしたら、『せめて、女王らしく威厳あるお姿を!』って」

 みゆは自分の今の服装を、立ち止まってしげしげと眺めてみた。

 ティアラと杖はそのままだが、フリル付きのふわふわなピンク色のドレスに、大粒の真珠が付いた真っ白な靴。そしてドレスの上からつやつやした光沢のあるビロードの黒いマントを羽織っていた。

 「とってもかわいいよ!みゆ!」
 「そ、そうかな?でも、靴のヒールが高くて歩きにくいよ」
 「じゃあ、杖に『伸びろ!』って、命じてみて。地面に杖をついて歩けば、転ばないよ」
 「え?こう?」

 みゆはガラちゃんから言われた通りに赤いルビーがはめ込まれた巨人の杖に、『伸びろ!』と、大きな声で命令してみた。

 すると――――。


 ずんずん!!


 「うわあっ?びっくりした!本当に伸びた!」

 みゆが驚いて悲鳴を上げると、杖は地面につくほど長く伸びた。

 「他にもその杖は形を変えられたり、魔法を使えたりできるから、いろいろ試してみて」
 「う、うん。でもこれ本当に魔法の杖だったんだね!使い方を間違えないようにしないと、危ないね」
 「そうだね、ガラちゃんはまだ見たことないけど、うっかり巨人を呼び出しちゃったら踏みつぶされちゃうもんね」
 「うん、私絶対に巨人なんか呼ばない」

 みゆはこわばった顔で、ガラちゃんの話にうなづいた。

 「あれ?何だか向こうの方が騒がしいね」
 「え?どこ?」

 みゆが真剣な表情で金色の杖をにらんでいると、ガラちゃんが前方を眺めながら声を上げた。

 お城から出てしばらく歩いたひとけのない田舎道で2、3人くらいの大きな声が聞こえてくる。

 「あっ!おじいさんと男の子が泣きそうな顔して、こっちに向かって走ってくるよ!誰かに追いかけられてるみたい!」

 ガラちゃんが前から走ってくる2人に気づいて叫んだ。

 「本当だ!ねぇ、2人を後ろから追いかけてるアレって!?」
 「うん!アレは半魚人だよ!!」

 みゆの悲鳴に、ガラちゃんは大声で答えた。