「賢明ですね」
「きみが誘ったんでしょ」
「あなたが男装したらたいへんなことになる」
「私が推しさんじゃないの!?」
つまり、
きみが推しさんのコスプレをして、私がその男性の方のコスプレを?
「雷の音が聞こえます」
「私には聞こえないけど」
「すぐに片づけて帰りましょう。明日雨でしたら部活はなしです」
「明日は会えないの?」
「ぎえ」
彼が小さくうめき、顔をそらしてメガネを右手の指先でクイッと上げる。
「あ、会えますよ。あなたが元気なら」
(面白すぎー!!)
「『サンドリヨン』ってどんな曲?」
ささっと道具や軍手を裏庭の倉庫に仕舞い、汗を拭いて帰路につく。あ、遠雷。鼓膜を低くふるわす。
「『サンドリヨン』はボカロ界に燦然とかがやく伝説のデュエット曲で、」
「10文字以内で」
「好きです!!」
「え」
正気に戻った。
彼は首まで真っ赤になって、目を泳がせている。
何か言い訳を始める前に、その唇をもう1度奪おう。
(初恋色の夏が来た!!)
2025.08.09
蒼井深可 Mika Aoi
「きみが誘ったんでしょ」
「あなたが男装したらたいへんなことになる」
「私が推しさんじゃないの!?」
つまり、
きみが推しさんのコスプレをして、私がその男性の方のコスプレを?
「雷の音が聞こえます」
「私には聞こえないけど」
「すぐに片づけて帰りましょう。明日雨でしたら部活はなしです」
「明日は会えないの?」
「ぎえ」
彼が小さくうめき、顔をそらしてメガネを右手の指先でクイッと上げる。
「あ、会えますよ。あなたが元気なら」
(面白すぎー!!)
「『サンドリヨン』ってどんな曲?」
ささっと道具や軍手を裏庭の倉庫に仕舞い、汗を拭いて帰路につく。あ、遠雷。鼓膜を低くふるわす。
「『サンドリヨン』はボカロ界に燦然とかがやく伝説のデュエット曲で、」
「10文字以内で」
「好きです!!」
「え」
正気に戻った。
彼は首まで真っ赤になって、目を泳がせている。
何か言い訳を始める前に、その唇をもう1度奪おう。
(初恋色の夏が来た!!)
2025.08.09
蒼井深可 Mika Aoi



