「ん?」
「それ、僕です」
(ん!?)

私がぎょっとして顔を上げると、彼は気まずそうに目をそらす。
「推しのコスした僕」
「こ、コス?」
「コスプレです」
「こ、コス、プレ?」
(ちょ、ま、え? え?)

「私より綺麗じゃないか!!」
「加工ですから」
「……」
なんなの、こいつ。
なんなの、こいつ。

飽きないぞ!!

バラは薄紅。内部は白。
「冬の歌姫」の澄んだ歌声に合わせて踊る。あれ、きみ、うまっ!!
「踊れないよ!!」
「自由で良いんですよ」
「じ、自由に、ってどうやるの?」
「自由に!!」

彼が私の右手を握る。やんわりと。やっぱり大きくてがっしりとした手。頼もしい手。(胸から香る透明感あふれる甘い香り。デオドラントかな?)

ノリにまかせてキスをしてみた。彼が首まで真っ赤になった。あ、童貞?