高校1年生の夏休み。
今年もとんでもなく蒸し暑くて、とんでもなく退屈な日々になる、と、
思っていた夏休み前の私を殴って正気に戻したい。
「ユリパイセン!!」
細いけれど筋肉質な両腕に緑色のジョウロを持って、テテテ、とさらつや黒髪の同級生が目の前を走っていく。
小動物みたいだけれど力持ちだ。ここ、裏庭までグラウンドの野球部やサッカー部の声が聞こえてくる。今日も活気があるな。
「ユリパイセン!! スカシユリパイセン!!
ああああああああああ!! 根元が茶色になってるー!!」
ほっそりとしているがよく日に焼けた身体を真っ白な半そでのワイシャツと黒糖色のボトムの制服で包んだ彼が、
スカシユリの花壇の前でがくりと両ひざをつく。
「誰があなたたちをこんな目に……」
「太陽だね。水不足」
「復活のじゅもんー!! 喰らえ、アクア!!」
「ブフッ」
ほかに入る部が見つからず、だからと言って第一志望の学校で帰宅部もつまらない。
適当に入った園芸部でこんなに楽しい毎日を過ごすことになるとは。
「あぁっ、グラジオラスパイセン!! こんなに花ガラがついたままじゃないですか!!」
「私、栄養剤取ってくるね」
「はぁい」
オタクくんはいつも楽しそうだ。銀縁ボックス型メガネの奥の愛らしい二重のどんぐりまなこは、いつ会ってもたっぷりした半月の形をしている。
「バラは花が終わったものは黒くなっているので、花ばさみでチョッキンしてください」
今年もとんでもなく蒸し暑くて、とんでもなく退屈な日々になる、と、
思っていた夏休み前の私を殴って正気に戻したい。
「ユリパイセン!!」
細いけれど筋肉質な両腕に緑色のジョウロを持って、テテテ、とさらつや黒髪の同級生が目の前を走っていく。
小動物みたいだけれど力持ちだ。ここ、裏庭までグラウンドの野球部やサッカー部の声が聞こえてくる。今日も活気があるな。
「ユリパイセン!! スカシユリパイセン!!
ああああああああああ!! 根元が茶色になってるー!!」
ほっそりとしているがよく日に焼けた身体を真っ白な半そでのワイシャツと黒糖色のボトムの制服で包んだ彼が、
スカシユリの花壇の前でがくりと両ひざをつく。
「誰があなたたちをこんな目に……」
「太陽だね。水不足」
「復活のじゅもんー!! 喰らえ、アクア!!」
「ブフッ」
ほかに入る部が見つからず、だからと言って第一志望の学校で帰宅部もつまらない。
適当に入った園芸部でこんなに楽しい毎日を過ごすことになるとは。
「あぁっ、グラジオラスパイセン!! こんなに花ガラがついたままじゃないですか!!」
「私、栄養剤取ってくるね」
「はぁい」
オタクくんはいつも楽しそうだ。銀縁ボックス型メガネの奥の愛らしい二重のどんぐりまなこは、いつ会ってもたっぷりした半月の形をしている。
「バラは花が終わったものは黒くなっているので、花ばさみでチョッキンしてください」



