ミシュリーヌが大好きだという推しのモアメッド・ディーラー。
彼女がモアメッドと結ばれたいと心から望むならば、クロエは禁忌すら犯すだろう。
ミシュリーヌが推し活を始めて、その愛らしい姿をずっと眺めていたい。
そのためだけに興味がない訓練場へと足を運ぶ。
推し活を楽しむミシュリーヌを見れるだけで、クロエはこれ以上ないほどに幸せだった。
ミシュリーヌと共に足繁く第二騎士団に通うクロエのせいで、第二騎士団の士気が上がったことなど関係ない。
ミシュリーヌが幸せかどうか。
それはクロエの人生にとって、もっとも大切なことだといえるだろう。
そんなミシュリーヌがついに婚約してしまった。
いつかこんな日がくるとは思っていた。
それは貴族としては変えられないことはわかっている。
だからこそミシュリーヌには誰よりも幸せな結婚をしてほしい、そう願っていた。
それなのに突然の婚約の打診はミシュリーヌ戸惑うばかり。
オレリアンは顔もよく、家柄も地位も申し分ない。
ミシュリーヌを守れるところも高く評価しよう。それにミシュリーヌを選んだこともだ。
けれど許せないのはオレリアンをミシュリーヌが好いていないということ。
そして……直接婚約を申し込まなかった不誠実さにクロエの怒りが爆発である。
ミシュリーヌの気を揉ませる奴は万死に値する。
何よりまずいのはクロエの言い回しが悪かったことや、オレリアンが婚約相手をクロエと間違えたという先入観で、大きな勘違いを生んでしまったということ。
恐らくミシュリーヌはクロエがオレリアンのことを好きだと思っているのではないだろうか。



