(クロエside)

クロエはここで大きな違和感を覚えていた。

(なんだかミシュリーヌお姉様と会話が噛み合っていないような気がするわ)

会話が噛み合っているかと思いきや、何故かミシュリーヌの言っていることがズレているような気がしたからだ。

(ミシュリーヌお姉様、何を言っているのかしら。わたくしなら絶対にうまくいくって…………ま、まさか!)

今までも何度かクロエは疑問なことがあった。
けれどミシュリーヌには伝わっているだろうと思い込んでいたのだ。

(ミシュリーヌお姉様……絶対に勘違いしているわ)

思えば、始まりからそうだった。
オレリアンからの婚約の申し込みはミシュリーヌではなく、クロエだったのではないかと思っていたことが発端ではないだろうか。

令嬢たちのお茶会でも必ずといっていいほどに名前が上がるオレリアン・レダー。
クロエはお似合いだと言われていたが、まったく興味がなかった。
何故ならば、クロエには神よりも素晴らしい存在である〝ミシュリーヌ〟がいるからだ。


彼女より美しく綺麗な存在に会ったことはない。
幼い頃は意地悪ばかりしてきて、お世辞にも好きだとは言えなかった。
けれど『思い出した。このままじゃいけないわ』と青ざめていた時からミシュリーヌは変わった。