ミシュリーヌは頷いた。クロエがオレリアンのことが好きなことはわかっている。
その上でミシュリーヌの幸せを考えてくれているのだろう。

(クロエは本当にいい子だわ)

だけどミシュリーヌの幸せを願っているのはミシュリーヌも同じだった。
クロエは涙を浮かべながら顔を上げた。


「でもね……わたくし、これだけは譲れないの! だって、本当に大好きなんですもの」

「…………!」


ミシュリーヌはクロエの気持ちに改めて驚かされていた。

(クロエはそれほどまでにレダー公爵のことを……!)

彼女はミシュリーヌのために自分の本当の気持ちを隠していたのだろうか。
ミシュリーヌができることは、二人がなるべくいい関係を築けるように支えることではないだろうか。


「クロエ、わたしに任せてちょうだい!」

「……え?」


ミシュリーヌは一年間、オレリアンの婚約者のふりを完璧にこなし、クロエに繋ぐことを目標に頑張らなければならない。

(クロエとレダー公爵の仲がもっと深まるようにわたしも頑張らないと……!)

ミシュリーヌのタスクに二人の距離がもっと近づくことが加わる。
クロエの涙を指でそっと拭ってから笑みを浮かべた。


「あなたの幸せがわたしの幸せだもの。大丈夫よ、クロエならば絶対にうまくいくわ」

「え……? ミシュリーヌ、お姉様?」