何かを思いついたミシュリーヌが、子爵邸へと戻っていく。
慌てた様子で何か指示を出している間、オレリアンは馬を撫でながら空を見上げていた。
星が瞬いていてとても美しい。

(こんな風に空を見上げたのはいつぶりだろうか)

夜は恐ろしいものだ。眠ることも同じ。
だけど今日はオレリアンの常識が覆った初めての日だ。


「お待たせいたしました……!」


ミシュリーヌは顔が隠れるほどのラベンダーの塊を持ってきた。
その横からミシュリーヌがひょっこりと顔を出す。


「レダー公爵が夜もよく眠れますように!」

「……!」


その瞬間、オレリアンは何故だがわからないが涙が出そうになってしまった。
彼女の優しさがじんわりと心に沁みていく。


「…………ありがとう」

「お気をつけて!」


ミシュリーヌはオレリアンの姿が見えなくなるまで見送ってくれた。
愛おしい気持ちとさが込み上げてくる。

(今日から健康的な生活を心がけよう……)

しかし健康的な生活とはどういうものかわからない。
執事に聞いてみようと思いつつ、馬で駆けていく。
ふとした瞬間に、ほんのとミシュリーヌからもらったラベンダーの香りがした。

酔いが回ると本性が出るというが、オレリアンはミシュリーヌがずっと気になっていたのだ。
またすぐに彼女に会いたいと思う。こんな温かい気持ちになったのは初めてだった。



(オレリアンside end)