推し活スポンサー公爵との期限付き婚約生活〜溺愛されてるようですが、すれ違っていて気付きません〜

サイドテーブルに置かれているアロマキャンドルの火を消そうと立ちあがろうとした時だった。
何かに突っかかっている感覚。
オレリアンがドレスの裾を引いているのだと気づいて驚いていた。
彼の方を見ると、彼は確かに寝ているはずなのだ。
指を外そうとすると、繋ぎ変えとでもいうようにミシュリーヌの手をがっちり掴んでしまう。

(どうしましょう……このままだと動けないわ)

美しすぎる顔からは想像できないほどにゴツゴツとした手のひらと骨張った指。
ミシュリーヌが困惑していると、オレリアンから声が漏れる。


「…………行か、ないでくれ」


呟くように言った声色には微かに悲しみが滲む。
ミシュリーヌはぴたりと動きを止めた。
彼は怖がっているようにも見えたからだ。

(レダー公爵がゆっくりと休めますように……)

ミシュリーヌは椅子に腰掛けながら彼の手を両手で包み込むように握りしめた。
手のひらから伝わる熱。
ラベンダーの香りを感じるために目を閉じるとリラックスしてくる。
次第にミシュリーヌにも眠気が襲った。

(昨日、推し活ではしゃぎすぎたせいかしら。全身痛いし、わたしも少し休みましょう)

手を繋ぎながら、ミシュリーヌはベッドに横になった。


* * *