推し活スポンサー公爵との期限付き婚約生活〜溺愛されてるようですが、すれ違っていて気付きません〜

オレリアンは困惑しているようだが、気にすることなくミシュリーヌは来客用の部屋へと引っ張っていく。
それから侍女やシェフたちに指示を出していく。
来客用の部屋もサロンほどではないが植物が多く癒される空間だ。
まだ日は高く昼食の時間帯ということもあり、暫くするとすぐにワゴンに載って食事が運ばれてくる。


「野菜がゴロゴロと入ったスープとパンです」

「ミシュリーヌ嬢、俺は……」

「食べられそうですか?」

「…………」


オレリアンは黙ってはいるが静かに頷いた。

そしてスプーンを手に取り、黙々と食べ進めていく。
だが、手は積極的に動いてはいない。
あまり食欲はないのだろうか。時間をかけて皿は空っぽになった。

(食べられることはいいことだわ。食べることもつらくなったら……もう)

悲しい思い出に蓋をしつつミシュリーヌは微笑んでから、オレリアンからジャケットや剣を預かり、入浴の準備を進めていく。
ミシュリーヌは湯船に色とりどりの薔薇を浮かべるためにカゴに薔薇を入れていく。
花を使ったおもてなし……これがシューマノン子爵流である。
その姿をオレリアンは不思議そうにしていた。

(レダー公爵が薔薇風呂に浸かっているとこを想像するだけで……)

と、思っているとオレリアンの世話をしていた侍女たちが鼻血を出して次々と運ばれてくるではないか。

(さすがレダー公爵……美貌に当てられたのね)