「そ、そんな大した内容ではないので……」
「いや、君の手紙は何よりも大切だと思っている」
「……!?」
ミシュリーヌの隣にいるクロエは思いきり目を見開いた。
それはお茶の準備をしていた周りにいる侍女たちも同じようになっ驚いているように見える。
カチャリと食器が擦れる音だけが響いていた。
しかしミシュリーヌだけはまったく違うことを思っていた。
(もしかしてレダー公爵は、クロエの前でいいところを見せたいのかしら……)
その思いを裏付けるようなことが起こる。
真剣な表情のオレリアンとクロエが見つめ合っているではないか。
二人は見つ目合ったままピタリと動かなくなってしまった。
(やっぱりそうなんだわ。二人は想いあっているのね……!)
残念ながらミシュリーヌには二人の間に走る火花と不穏な空気が見えてはいなかった。
睨み合っていることに気づかずに、ミシュリーヌの勘違いは着々と進んでいく。
ミシュリーヌはオレリアンの前のソファに腰掛けた。
目の前に並べられるティーカップやお菓子。
緊張しているのか侍女たちの手が震えている、というよりはオレリアンの美しさに目を奪われているといった形だろう。
オレリアンは淹れ直した紅茶を飲み込んだ後に口を開く。



