「ミシュリーヌおじょ、ミシュ、ミシュリーヌお嬢さまぁ……!」
慌ててやってきたら侍女だが、かなり取り乱しているようで何を言いたいのかがさっぱりわからない。
ミシュリーヌが落ち着くようにしていると、侍女がお揃いことであることを告げる。
「レ、レダー公爵がいらっしゃいました!」
「──レダー公爵がっ!?」
「かなり焦っているというか、とても怖くて……」
「……っ!」
カタカタと小さく震える侍女たち。
もしかしたらレダー公爵は文句を言いにきたのではないだろうか。
しかしここで対応を間違えたらシューマノン子爵家に迷惑がかかっててしまう。
(何を言われるか怖いけれど、ここで下手なことはできないわ)
それにオレリアンは来訪の連絡もなくやってきたのだ。
(もしかしてもう婚約は解消したいと言われてしまうのかしら……)
ミシュリーヌは焦りを隠しつつ、侍女に問いかける。
自分とオレリアンの関係がどうなったとしても、クロエとの関係だけは守り抜かなければならない。
「お父様とお兄様は?」
「領地の視察に。夕方には帰ると言っておりましたわ」
「そう……なら、サロンに通してちょうだい。準備したらすぐに向かうわ」
「かしこまりました」
ミシュリーヌは緊張しているであろう侍女の手を握る。
「わたしたちで頑張って乗り越えましょう!」
「え……? は、はいっ!」
侍女は戸惑いつつも戻っていった。
それほどまでにオレリアンはミシュリーヌの要望に怒っているということだろうか。
(すべてはわたしのせいだもの。しっかり責任をとらないと)



