推し活スポンサー公爵との期限付き婚約生活〜溺愛されてるようですが、すれ違っていて気付きません〜

ジョゼフは呟くように言うミシュリーヌを見てにっこりと笑う。


「クロエから聞いたが、マリアン様にも絡まれたんだろう? どうしてそんなに呑気なんだよ……」

「マリアン様にはわたしではなく、レダー公爵か父に直接言ったほうがいいと伝えたわよ?」

「…………そう。まぁ、なんというか君らしいけどさ」


ジョゼフは額を押さえながら首を横に振っている。
ミシュリーヌが公開練習に遅れてくるのは珍しいため、ジョゼフに何かあったのかと問われた。
だがモアメッドの推し活に夢中なミシュリーヌの代わりに、何故かクロエが説明していたのだ。
ジョゼフはこうなった経緯を今すぐに話せとミシュリーヌを訴えてくるが、答えはわからないだ。
そんな押し問答をティティナ伯爵邸に向かう馬車の中で話したと言うわけだ。


「クロエの言う通りこのまま引くことはないだろうね」

「だけど子爵令嬢のわたしに何か言っても現状は変えられないわ」

「マリアン様にその考えが伝わればいいけど……まぁ、無理だろうね」

「どうして? これ以上、わたしに話してもどうにもならないでしょう?」

「そういう問題じゃないと思うよ。僕にもそれくらいはわかるけどね。とにかく一人にならならいように気をつけて。その辺はクロエがしっかりしているから大事だと思うけれど……」


ジョゼフはクロエのそばにいても平気な数少ない男性の一人だ。
ちなみに残りは父と兄である。
幼い頃からクロエに接しているからだろう。