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ミシュリーヌは推し活が終わり、ジョゼフと共にティティナ伯爵邸へと向かう。
クロエは珍しく用があるからとシューマノン子爵邸に先に帰っていく。
彼女と離れるのは久しぶりすぎて違和感を覚えた。
それほどクロエといつも一緒にいたのだ。
今日はジョゼフと新商品についての打ち合わせだった。
訓練場からティティナ伯爵邸まで興奮してミシュリーヌはモアメッドへの気持ちが止まらない。
「今日のモアメッド様は一段と輝いていたわね! ぎりぎり間に合ってよかったわ」
「なぁ、ミシュリーヌ……ちゃんと説明してくれよ」
「さすがの剣捌きよね。魔法にかかったみたいにビリビリと痺れちゃったわ! はぁ……今日なんて寝癖があったのよ。寝癖っ! くぅー……最高に可愛かった! 顔面国宝すぎて推せるわー」
「…………あのさ」
ジョゼフが乱暴に紅茶のカップを置いた。
ソーサーが擦れて音を立てたため、ミシュリーヌは視線を空からジョゼフへと移す。
「ジョゼフ、変な顔をしてどうしたの?」
「君こそどうしていつもと何も変わらない態度なんだよ」
「ふふっ、それはね……」
「それは?」
「な、なんでもないわ」
ミシュリーヌはオレリアンとの約束が口から出そうになり、思わず口を塞ぐ。
(この話はジョゼフにも内緒にしないといけないわ。レダー公爵の名誉のためにも!)
ミシュリーヌは何度か頷いた後に何事もなかったように話を逸らす。
「それよりも新商品のサンプルのことだけど……」
「そうじゃないでしょう?」
「……むぅ」



