推し活スポンサー公爵との期限付き婚約生活〜溺愛されてるようですが、すれ違っていて気付きません〜

(……何故わざわざそんなことを?)

何か目的があるのだろうか。
けれどミシュリーヌは淡々とゴミを片付けて辺りを綺麗にして去っていく。
それからも練習がある度にミシュリーヌはオレリアンは最後に必ず訓練所のゴミを集めているのを見て目を見開いた。

誰に見られるわけでもなく、ミシュリーヌは練習場を綺麗にしている。
そんな時、ミシュリーヌの髪についていた黄色の花がぽとりと地面に落ちてしまう。
彼女はそのことに気づいてはいないようだ。

オレリアンはミシュリーヌの髪飾りを拾い上げる。
いまだに声を掛ける前に緊張してしまう。
だけどミシュリーヌに髪飾りを手渡すために声をかけた。


『……落としたぞ』

『きゃっ……!』


人がいると思っていなかったのか、ミシュリーヌは肩を跳ねさせて驚いてしまう。
しかしすぐに髪から落ちた髪飾りに気づいたのだろう。
こんな時、オレリアンは何て言葉をかけていいかわからい。
『驚かせて申し訳ない』
そう声をかけようとして口ごもる。
自分よりも年下の少女に気の利いた言葉をかけられないのも申し訳ない。
何も言わないオレリアンをじっと見ていたミシュリーヌ。


『ありがとうございます……!』


彼女は袋を置くと、にっこりと笑みを浮かべて髪飾りを受け取った。
特にオレリアンに興味を持っている様子はない。
そのまま作業を再開しようとするミシュリーヌに驚いていた。


『どうして君が? ゴミなどここを管理している者に任せればいいじゃないのか?』