『おれりあん、気になる令嬢に婚約を申し込むぞぉ! こぉーいうのは勢いなんだよ、いきおいっ』
『わかっれますよ! 申し込めばいいんですよね。わーってまふ』
そのまま執事に婚約の申し込みをするから書類を用意するように指示を出す。
周りに『酔いが覚めてからにした方が……』と、制止するが、二人の勢いは止まらずに婚約を申し込んだようだ。
それからはアントニオと何を話したか覚えていない。
その時のことはぼんやりと覚えるが、オレリアンは痛む頭を押さえながら呆然としていた。
次の日、アントニオとオレリアンが目を覚ました時には、シューマノン子爵邸に手紙を届けた早馬が帰ってきていた後だった。
アントニオが『やはりクロエ嬢か!』と、笑っていたがオレリアンが婚約を申し込んだ相手がミシュリーヌ・シューマノンだったことを聞く。
アントニオはミシュリーヌがわからないのか首を捻っていた。
執事から昨日の失態を聞いたオレリアンは絶望していた。
何の連絡もなく、まともに会話すらすることなく『婚約してくれ』と圧をかけるなど失礼にもほどがある。
(なんてことをしてしまったんだ……急いで謝罪の手紙とあとは……あとは何をすればいい?)
オレリアンは混乱と二日酔いで痛む頭を押さえながら、自分のやるべきことを考えていた。
アントニオはやっと起きてきたかと思うと、途中からまったく記憶がないらしい。
事情を話そうとするが、アントニオとオレリアンの元に早馬が届く。



