このままだといつか闇に飲まれてしまう。
そう思ったオレリアンはひたすら己を鍛えて力をつけた。
ふと気づいた時には、なぜか闇魔法に飲まれることなく普通に使いこなせるようになっていた。
それが史上初のことだと気がついたのだが、幼い頃の追い詰められるようや恐怖はオレリアンにしかわからないのかもしれない。

結婚するということは、子を残すということだ。
養子をとることも考えていたが、闇魔法という強大な力を重視しているのだろう。
できるだけ引き継がせたいとのことだった。
公務での護衛の際もベガリー国王にもさりげなく結婚を急かされていた。

アントニオに出会うまでは、誰ともろくに会話すらしたことがなかった。
噂が一人歩きしていたが、否定も肯定もしない。
それが口下手で人と距離を詰められない原因だった。
オレリアンとは真逆で男らしく体格がよく、無精髭で面倒見のいい彼のことを尊敬していた。
一人で孤立していたオレリアンを当然のように掬い上げてくれたアントニオは恩人だ。
彼がいなければ、オレリアンは今でも一人で孤独に苛まれていたかもしれない。