久しぶりに飲む酒だからかペースはどんどんと上がり、アントニオの酔いが回るのが早いようだ。
しかし上の立場や皆をまとめる苦労や緊張感がある仕事内容を知っているため、オレリアンも強くは咎めることはできない。
折角、オレリアンを信頼してくれる公爵夫人には申し訳ないとは思いつつ、少しでもアントニオが息抜きができるようにと思ってしまう自分は甘いだろうか。


『ほどほどにしてください。また夫人に怒られても知りませんから』

『わかってる。オレに任せておけっ! さぁ、今日はお前も飲め飲めっ』


アントニオが心底楽しそうにしている姿をみているとオレリアンも嬉しくなっている。
途中まではほどよく飲んでいたが、アントニオのペースが上がるのと同時にオレリアンも巻き込まれてしまったらしい。

(しまった……ペース配分を間違えてしまった)

なんとか意識は保っていたものの、大分飲み過ぎてしまったようだ。


『お前もそろそろ結婚しなければ! わかるか? オレリアンッ』

『……そのくらい、わかっています』

『オレはお前が心配なんだ。幸せになってほしいんだよおぉぉ……!』


だんだん熱くなっているアントニオには申し訳ないが、自分が特定の女性と共にいることなど想像ができたことはなかった。
一番は魔法のこともあるが、オレリアンは女性関係に心底うんざりしていたため結婚など考えられなかった。
あまりそうは思わないが自分の顔が整っているそうだ。
力にも地位にも恵まれている。
貴族としての役割も理解していたつもりだが、どうにも積極的に相手を探す気にはなれなかった。