すると第二騎士団の練習場から甲高い悲鳴が響く。
ミシュリーヌは肩を揺らした後にガタガタと震え始める。
早く会場に行かなければモアメッドの勇姿が見られないではないか。
挙動不審になるミシュリーヌにドン引きするマリアンたち。

(何も言わないってことは、もういいかしら……!)


「ミシュリーヌお姉様、早く行きましょう」

「あっ、えぇ、そうね! マリアン様、失礼いたします」


クロエの言葉に何度も頷いたミシュリーヌは唖然としているマリアンに視線を送り、挨拶をしてから背を向けた。


一方、取り残された三人はというと……。

サラとエマは怒りで肩を震わせたマリアンに声をかけるかどうか迷っていた。
二人は目を合わせていると、マリアンは血走った目を見開いきながらミシュリーヌを睨みつけていた。


「あの女……このわたくしを馬鹿にするなんてっ! わたくしの言うことに反論してくるなんて許せないわ」

「「…………」」

「もっとわたくしを敬いなさいよっ、子爵令嬢の分際でわたくしの居場所を奪うなんて許されないんだから!」


爪をガリガリと音を立てて噛むマリアンの表情は恐ろしい。
双子の令嬢たちは困惑していた。
それはミシュリーヌの言うことを一理あると納得したからだ。
けれどそれを今のマリアンに言うことはできない。
サラとエマは彼女の怒りが自分たちに向くことを恐れていた。

自分がオレリアンの婚約者になれると信じて疑わなかったマリアン。
昨日、彼が名前も顔もわからない子爵令嬢と婚約したと聞いて、マリアンは怒りからか荒れていた。
それがこの国で一番有名な令嬢と言っても過言ではないクロエの姉だと知った。

オレリアン様の婚約の座から引き摺り下ろさなければ気が済まないとミシュリーヌを待ち構えていたのだ。
意気揚々とミシュリーヌを待ち構えていたが、顔がわからない。
クロエが一緒にいたことで、やっと見つけることができたのだ。