推し活スポンサー公爵との期限付き婚約生活〜溺愛されてるようですが、すれ違っていて気付きません〜

「わたしのたかが子爵令嬢です。わたしの一存ではどうすることもできないことはマリアン様はご存知ですよね?」

「なっ…………!」

「なので、マリアン様の希望はレダー公爵か父に直接話された方が効率がいいと思います。わたしにはどうすこともできませんので」

「……っ!」


マリアンは顔を真っ赤になり、握り込んだ拳はプルプルと震えているではないか。
しかしミシュリーヌは当然のことを言ったつもりだった。

(どう考えたって、わたしに言うよりレダー公爵に言った方が手っ取り早いのに……)

クロエは「ミシュリーヌお姉様の言う通りですわ」と、呟くように言った。
マリアンの両隣にいるサラとエマも困惑した表情で顔を見合わせている。
マリアンになんて声を掛ければいいかわからないのだろう。
彼女とミシュリーヌを交互に見つつ、困惑しているように見えた。

ミシュリーヌの耳に歓声が聞こえた。
もうすぐ練習が始まってしまうのかと思うと震えが止まらない。
マリアンが下唇を噛みながら俯いてしまう。
「……それができたら苦労しないわよっ」
何かをボソリと呟いたような気がするが、ミシュリーヌの耳には届くことはなかった。