推し活スポンサー公爵との期限付き婚約生活〜溺愛されてるようですが、すれ違っていて気付きません〜

婚約した以上、任務は全うする。
クロエにいい形で引き継げるようにジョゼフと同じようにビジネス関係でサッパリとした関係を築けば、クロエならば察してくれるかもしれない。
ミシュリーヌはクロエを安心させるように笑みを浮かべた。


「クロエ、わたしなら大丈夫よ!」

「……ミシュリーヌお姉様」

「わたしにはクロエという一番の味方がいてくれるもの。それに推し活仲間もいるから大丈夫よ!」

「ミシュリーヌお姉様がそこまで言うなら、わかりましたわ」


クロエに手伝ってもらい明日の準備を済ませた。
一緒に紅茶を飲んで、クロエは自室へと戻っていく。
手を振り彼女を送ったミシュリーヌは寝る準備をするためにベッドへと向かう。

(婚約かぁ……)

侍女たちが部屋から出ていき、ミシュリーヌは窓の外を見ながら気まずそうに視線を逸らしていたオレリアンのことを考えていた。

(オレリアン様、麗しかったな……第一騎士団の副団長。副団長といえば、わたしの推しのモアメッド様と同じだわ)

ミシュリーヌは第二騎士団の副団長であるモアメッド・ディーラーを激推ししていた。
彼は二十歳で第二騎士団の副団長を務めている。

その理由は前世にまで遡る。
前世で病床で毎日、配信を楽しみにしていた。
ディーというVチューバーはとにかく明るくて優しく、ファンを大切にしていた。

猫のように可愛らしい容姿とは裏腹、性格は男らしくて豪華。
笑顔がとても素敵で、いつも明るい気分にさせてくれる。
母親に頼んで初めて投げさせてもらった長文のスパチャ。
丁寧に読み上げて、寄り添い応援の言葉をくれた。
それから名前を覚えてくれて、いつも体調を心配してくれる。
リスナーもいい人ばかりで、コメントをすると優しく声をかけてくれた。
温かい言葉をくれるディーもディーのリスナーも大好きだった。
つらい治療中も支えてくれた彼に、最後にお礼を言えなかったことは悔やまれるが、彼は今日も誰かを笑顔にしてくれるだろう。