推し活スポンサー公爵との期限付き婚約生活〜溺愛されてるようですが、すれ違っていて気付きません〜

「ミシュリーヌお姉様、明日はどのドレスを着ていくの?」

「オレンジとイエローと迷うけれど、明日はイエローにしようかしら」


ミシュリーヌはクローゼットに並ぶ濃淡が違うイエローとオレンジのドレスを眺めながら笑みを浮かべた。
もちろんモアメッドを意識してのことである。


「そうよね。わたくしはどうしようかしら……」

「クロエなら何色でも似合うわ」

「やっぱりわたくしはピンクにするわ」

「またピンク? 第二騎士団でピンクカラーの騎士はいないはずだけど……」


ミシュリーヌは首を捻る。
ピンクはネファーシャル子爵家くらいしかいない。

(クロエは第二騎士団に推しもいないのに、毎回第二騎士団の公開練習についてくるのよね……どうしてかしら)

推しカラーのドレスを着るのは定番なのだが、クロエはずっとピンクのもので揃えていく。


「ふふっ、わたくしはピンク推しですの」

「そう? もし推しがいないんだったら無理をしなくても……」

「いいえ、わたくしはミシュリーヌお姉様と一緒におります。ピンクが一番好きな色ですもの」


ミシュリーヌはたまにクロエの考えがわからないことがある。
クロエはミシュリーヌの髪色のピンク。
つまりミシュリーヌ推しなのだが、自分が推されているとは微塵も思わないため、好きな色なのだと勝手に納得することにした。
ミシュリーヌが頷いていると、クロエは手を包み込むように握る。