これもミシュリーヌの可愛いところなのだが、思い込んだらまっすぐなのだ。
そして今、完全にクロエがオレリアンと結ばれたいと思っていると思い込んでいるのではないだろうか。

(わたくしのためにミシュリーヌお姉様が頑張ってくれるのは嬉しいけれどっ! 嬉しいけれど嫌よ!)

けれど今はミシュリーヌの可愛さに酔っている場合ではない。

それにクロエにはもう一つ気がかりなことがあった。
それはマリアン・ディリナのことだ。
彼女はオレリアンにかなり入れ込んでいて、自分が婚約者になると信じて疑わなかったようだ。
だが、婚約を申し込むならば早々に申し込んでいるだろう。
そうではないと思っているのは本人だけだ。
周囲は彼女の暴走行為をよく思ってはいないことは明白だった。

すぐにミシュリーヌに接触してきたこともその証拠だ。
ミシュリーヌは彼女にきちんと説明をして、わかってもらったつもりでいるかもしれないが、マリアンがそう簡単に引くとは思えない。

(わたくしがミシュリーヌお姉様を守るの。だけど、今は誤解を解くのが先よ……!)

その後、懸命に誤解なのだと説明するクロエだったが、ミシュリーヌに気を遣っていると思われてしまい、逆効果になってしまうことになるとは思いもしなかったのだった。




【 完 】