「じゃあ、今日は外回りに行こうか」
 俺が席を立つと、彼女は慌てて鞄を
肩に下げ、
 「は、はい! わかりました」
 と元気に返事をすると俺の背後から
ちょこちょことついて歩き始める。
 
 俺は……
まるで子犬みたいだな……って
思わず笑みを浮かべた。
 「あのぉ~、なにか?」
 不思議そうな顔で俺を見上げる彼女に、
 「い、いや。なんでもないよ。
今日は、お得意様を回るから……
足、痛くなるかもしれないよ」
と言うと彼女は、
 「はい、大丈夫です。私、地元では
毎日30分くらい歩いて学校に通ってたので、
足腰は強いんです」と爽やかな笑顔で
答える彼女。
 「そっか……じゃあ、大丈夫だね」
 と彼女の笑顔につられ俺も思わず微笑んだ。
 「上原さんって、年幾つ? 
 あ、これってセクハラになるのかな?」
 思わず呟いた俺に彼女は、
 「私ですか? 24歳です」と答える彼女。
 「24歳か……」
 「香月さんは幾つですか?」
 「俺? 俺は、今年で27歳」
 
 なんて社会人定番の自己紹介的な会話を
したんだよな……。
 
 「わぁ、やべぇ……これ忘れてた」
 「やっておきました!」
 「わぁ~、助かる! 上原さん、サンキュ」
 「どういたしまして」

 仕事覚えが早い彼女は気がつくと、
いつの間にか俺の相棒のように所々で
俺のサポートをしてくれるようになり
頼れる後輩となっていた。