ライトをハイビームにし、
走行する四輪駆動車。
しばらくすると、真っ白い雪の中に
突然ポツンと古びた二階建ての洋館が現れた。
「お父さん、あれ……建物が見えるよ。
美術館かホテルみたいだよ」
彩の言葉に少し安堵の表情を見せた父は、
「そうだな。一旦あそこで休憩しよう」
父はそう言うと古びた洋館に
引き寄せられるように車を敷地内へと
走らせた。
敷地内に車を停車させ、
車を降りた二人……
吹雪の中、洋館のドアを開けると、
二人の後ろから一気に雪が室内に
舞い込み慌ててドアを閉めた。
二人が室内を見回すと、
床は大理石でできており、
正面には二階へ続く年代物の木目調の
階段、床には廊下に沿って真っ赤な絨毯が
敷かれてあり、
エントランスの端に設置された
暖炉の中では薪が燃えオレンジ色の炎が
ゆらゆらと揺らめき、その前には
ビジターをもてなすテーブルと椅子、
ソファーが置いてあった。
彩はエントランス奥に
カウンターを見つけると、
「お父さん、ここホテルみたいだよ」
と呟いた。
身体に降り積もった雪を払いながら
父が声を発した。
「あのぉ~、すみません。誰かいませんか?」
父の声がエントランスに響き渡ると、
カウンターの奥のドアが開き、
白髪でブラウン系のスーツを着こなした
紳士的な男性が顔を見せた。
男性は、彩と父親を見て優しく微笑むと
「いらっしゃいませ……
おやおや、猛吹雪の中、
さぞかし大変だったでしょう……
さぁ、まずは、温かい飲み物でも飲んで
冷えた身体を温めてください。
どうぞこちらへ」と言うと
二人を暖炉の前にあるテーブル席に
案内した。
暖炉で身体を温める二人。
「お父さん、温かいね……」
「ああ、助かった……」
二人がそのような会話をしていると
白髪の男性がニコニコと微笑み
テーブルの上に銀のトレーにのせた
ティ―セットを運んで来た。
コポコポコポ……
カップに温かい紅茶が注がれ
白い湯気があがった。
カチャカチャカチャ、
手慣れた手つきでカップを
ソーサーにのせると、彩と父の
前に柑橘系の匂い漂う紅茶が
差し出された。
「どうぞ……冷めないうちに」
男性が微笑んだ。
「いただきます……」
二人は冷えた身体の中を美味しい紅茶で
温めた。
すると、男性がジャケットを整え、
「改めまして、私この洋館のオーナー、
鈴元と申します」と挨拶をした。
「洋館ってホテルのこと?」彩が尋ねると、
「そうですね、正式名称は洋館ホテル椿館
とでもいいましょうか……客室は五部屋のみ。
ここはもともと私が仕えていた鎧越家が
所有していた別荘で、皆様がここを手放される
際に私はこの洋館が大好きで、無理を言って
譲り受けたんですよ」と呟くオーナー。
「洋館ホテルか……なんか内装もレトロで
うん、いい感じ」彩が辺りを見渡した。
「おい、彩……」慌てる父にオーナーは、
「いいのですよ。それより、外は荒れ模様
よろしければ吹雪が止むまでゆっくり
していけばどうですか?」
「え、それはいささか……」
返事に困る父に彩は、
「え~お父さん、私ここで休みたい」
と口を尖らせた。
「大丈夫ですよ。この猛吹雪で立て続けに
キャンセルがでましたから……貸し切りですよ。
それに、この雪明日の朝まで止まないと……
ほら、天気予報でも言ってます」
オーナーはテレビに映る気象情報を指差した。
「え? ここに宿泊していいんですか?
ねぇ~お父さん、いいでしょ?
彩、ここに泊まりたい~」
懇願する彩に、父もフッと小さく息を吐くと、
「わかったよ……すみませんオーナーさん、
ではお言葉に甘えて今夜一晩お世話になります」
と頭を下げた。
「では、客室は二階の一番手前の部屋を
お使いください。鍵はこちらをお持ちください」
と言うとオーナーは鍵を彩に手渡した。
「わぁ~い。私、先に部屋に行ってるよ」
と言うと彩は一人階段を上り始めた。
「彩、この吹雪で電波がおかしくてさ
スマホが使えないみたいだから、電話をお借り
してお母さんとお兄ちゃんに連絡しなきゃ。
多分、今頃心配してると思うし……」
階段を上る途中の彩に向かって
父が告げると、
「うん、わかった」とニコニコしながら
彩は階段を上って行った。
走行する四輪駆動車。
しばらくすると、真っ白い雪の中に
突然ポツンと古びた二階建ての洋館が現れた。
「お父さん、あれ……建物が見えるよ。
美術館かホテルみたいだよ」
彩の言葉に少し安堵の表情を見せた父は、
「そうだな。一旦あそこで休憩しよう」
父はそう言うと古びた洋館に
引き寄せられるように車を敷地内へと
走らせた。
敷地内に車を停車させ、
車を降りた二人……
吹雪の中、洋館のドアを開けると、
二人の後ろから一気に雪が室内に
舞い込み慌ててドアを閉めた。
二人が室内を見回すと、
床は大理石でできており、
正面には二階へ続く年代物の木目調の
階段、床には廊下に沿って真っ赤な絨毯が
敷かれてあり、
エントランスの端に設置された
暖炉の中では薪が燃えオレンジ色の炎が
ゆらゆらと揺らめき、その前には
ビジターをもてなすテーブルと椅子、
ソファーが置いてあった。
彩はエントランス奥に
カウンターを見つけると、
「お父さん、ここホテルみたいだよ」
と呟いた。
身体に降り積もった雪を払いながら
父が声を発した。
「あのぉ~、すみません。誰かいませんか?」
父の声がエントランスに響き渡ると、
カウンターの奥のドアが開き、
白髪でブラウン系のスーツを着こなした
紳士的な男性が顔を見せた。
男性は、彩と父親を見て優しく微笑むと
「いらっしゃいませ……
おやおや、猛吹雪の中、
さぞかし大変だったでしょう……
さぁ、まずは、温かい飲み物でも飲んで
冷えた身体を温めてください。
どうぞこちらへ」と言うと
二人を暖炉の前にあるテーブル席に
案内した。
暖炉で身体を温める二人。
「お父さん、温かいね……」
「ああ、助かった……」
二人がそのような会話をしていると
白髪の男性がニコニコと微笑み
テーブルの上に銀のトレーにのせた
ティ―セットを運んで来た。
コポコポコポ……
カップに温かい紅茶が注がれ
白い湯気があがった。
カチャカチャカチャ、
手慣れた手つきでカップを
ソーサーにのせると、彩と父の
前に柑橘系の匂い漂う紅茶が
差し出された。
「どうぞ……冷めないうちに」
男性が微笑んだ。
「いただきます……」
二人は冷えた身体の中を美味しい紅茶で
温めた。
すると、男性がジャケットを整え、
「改めまして、私この洋館のオーナー、
鈴元と申します」と挨拶をした。
「洋館ってホテルのこと?」彩が尋ねると、
「そうですね、正式名称は洋館ホテル椿館
とでもいいましょうか……客室は五部屋のみ。
ここはもともと私が仕えていた鎧越家が
所有していた別荘で、皆様がここを手放される
際に私はこの洋館が大好きで、無理を言って
譲り受けたんですよ」と呟くオーナー。
「洋館ホテルか……なんか内装もレトロで
うん、いい感じ」彩が辺りを見渡した。
「おい、彩……」慌てる父にオーナーは、
「いいのですよ。それより、外は荒れ模様
よろしければ吹雪が止むまでゆっくり
していけばどうですか?」
「え、それはいささか……」
返事に困る父に彩は、
「え~お父さん、私ここで休みたい」
と口を尖らせた。
「大丈夫ですよ。この猛吹雪で立て続けに
キャンセルがでましたから……貸し切りですよ。
それに、この雪明日の朝まで止まないと……
ほら、天気予報でも言ってます」
オーナーはテレビに映る気象情報を指差した。
「え? ここに宿泊していいんですか?
ねぇ~お父さん、いいでしょ?
彩、ここに泊まりたい~」
懇願する彩に、父もフッと小さく息を吐くと、
「わかったよ……すみませんオーナーさん、
ではお言葉に甘えて今夜一晩お世話になります」
と頭を下げた。
「では、客室は二階の一番手前の部屋を
お使いください。鍵はこちらをお持ちください」
と言うとオーナーは鍵を彩に手渡した。
「わぁ~い。私、先に部屋に行ってるよ」
と言うと彩は一人階段を上り始めた。
「彩、この吹雪で電波がおかしくてさ
スマホが使えないみたいだから、電話をお借り
してお母さんとお兄ちゃんに連絡しなきゃ。
多分、今頃心配してると思うし……」
階段を上る途中の彩に向かって
父が告げると、
「うん、わかった」とニコニコしながら
彩は階段を上って行った。



