爆弾魔(♀)はご主人様に溺愛されています

彼が廊下に出て、声を掛けると、誰かが走ってきた。
「なんかあったか?・・・その子は?」
「この子ね、気に入ったから僕の従者にするね」
「お~、そうか。好きにすればいいんじゃないか?」
「うん、それでね、報告のためにもう帰ろうと思うんだけど」
「わかった、ここは任せろ」
そう頼もしく言った騎士(仮)は頷き、私のほうを見て、ニコリと笑った。
「・・・」
う~ん、よさそうな人、だけど主の名前すら知らないんだよなぁ。
・・・それに、冷たい笑顔で騎士(仮)を見つめる隣にの人が怖いし。
「じゃあネフ、手をつないで」
笑顔の威圧をやめ、男が手を伸ばしてくる。
素直に手をつなぐと、私の視界が一瞬ぐにゃりとゆがんだ。
そして、すぐに硬い床に気が付く。
舌を見ると、光を受けてキラキラと輝く、白い床があった。
なんだろう、色々なところに黒やら灰色やらの柄が入っている。
「ふふ、これは大理石っていうんだよ」
床を観察していた私に気づき、主が笑顔で教えてくれた。
「大理石・・・」
ってことは、これはやっぱり汚れてるわけではないんだ。
「シル?突然来たかと思えば挨拶もなしか」
考えていると、前のほうから温度の無い声が響いた。
怒っているようには聞こえないが、怒っていないようにも聞こえない。
なにも感じさせない、冷たいというよりは硬い声だ。
「あぁ、陛下。失礼いたしました。シェルヴィネット、無事帰還いたしました」
「よい。その女子(おなご)は誰だ」
陛下・・・陛下がつくと言えば、国王くらいだ。
だとしたらこの人が最高位・・・。
「彼女は施設にいた被検体です。気に入ったので僕の従者にしようと思いまして」
「そうか。お前が信頼しているならよいだろう。状況としてはどうだ」
「問題ありません、彼女以外殺しましたので」
・・・やっぱり、みんな殺されたんだ。
「汝、名をなんという」
「被検・・・、ネファリアです」
いつも通り番号を言おうとしてしまって、自分の新しい名前を思い出す。
「ネファリア・・・ほう、シルがつけたのか」
「シル・・・?」
誰だろう、と思ったものの、さっきこの人が主のことをそう呼んでいたので、きっと主の名前なんだろう。
「なんだ、シルお前、従者に名前すら教えていなかったのか」
「あぁ、ごめんね。僕はシェルヴィネット。母はメイドで、国王陛下の異母弟。王家の隠し子だよ。今は王宮で、騎士と研究員をしている」
・・・なるほど。
国王に対して、と考えると、彼の態度は軽いものだ。
血縁だったのか・・・。