爆弾魔(♀)はご主人様に溺愛されています

体の火照りが冷めたころ。
なんとなく『いつでも危機に対応できるよう、寝間着は存在しない』と察した私は、さっきの服よりも少し動きやすい服に着替えた。
黒の、メッシュとベルトがおしゃれなデザインになっている服だ。
なにかあったときのために、ベッドのすぐ横に強化魔法が施されているマントを置く。
例の魔導師は鑑定が得意だったようで、私も気づいたら鑑定ができるようになっていた。
ベッドに深く腰掛け、今日会ったことを思い返してみる。
仕事が終わって、施設にシル様が来た。
私はシル様の従者になって、隣のヴェルディア王国に行った。
シル様の本当の身分を知って、国王陛下とも会った。
宵月の3人に会って、宮を案内してもらった。
あまりにも濃い1日(と数時間)に、体と頭が疲れを訴える。
そのままベッドに倒れ込み、私は眠りの世界に引きずり込まれていくのを感じた。

☆───────────────────────☆

ここはどこだろう。
真っ暗で、上下左右がないように感じる。
ぼーっと立っていると、どこからか足音が聞こえた。
自分の周りをぐるりと見渡すと、人影が近づいてくる。
耳を澄ますと、小さくうめき声が聞こえた。
「うぅ・・・苦しいよぉ・・・」
「痛いぃ・・・なんでぇ」
「ひどいよぅ・・・辛いよぅ・・・」
皮膚はただれ、目玉がぶら下がり、髪が抜け落ちる。
唇が裂け、ボキボキと音が鳴り、徐々に指が落とされていく。
そんな影は、私よりもひとまわり小さい子供だった。
顔は認識できないくらいにグチャグチャ。
全員・・・私のせいで犠牲になった子だ。
実験に失敗して、亡くなった被検体たち。
そして。
「痛い・・・血がぁ・・・」
「苦いぃ・・・息がぁ・・・」
次に現れたのは、血を流す被検体たちと、唇の端から緑の液体を零す被検体たち。
ヴェルディアの騎士たちによって殺されたり、毒を呷って死んだんだ。
「次はお前だよぉ・・・」
1人の被検体が追いかけてくる。
いや、追いかけてくる、といってもおぼつかない足取りで、ふらふら歩いている。
「お前のせいで死んだんだぁ・・・」
「お前が死ねばいいんだよぉ・・・」
「なんでお前だけ生きてるんだよぉ・・・」
自分よりも小さな被検体。
「私たちは死んだのぉ・・・」
「あんただけおかしいわよぉ・・・」
「お前はずるいぃ・・・」
自分よりも大きな被検体。
そして。
「お前は死ぬんだよ!」
「そうだ!お前がいたから俺らは殺されたんだ!」
「なんで私は死ななきゃいけないの⁉」
施設長や、職員、食堂の女の人。
「あんたは生きてちゃいけないのよ!!」
何故だか分かる。
この人が、自分の母親だって。
その母親は、血走った目でナイフを持ち、追いかけてくる。
このままじゃ、殺される・・・。
必死に逃げ回ったものの、大人には勝てなかった。
追いつかれ、羽交い絞めにされ、ナイフが振り下ろされる───。