そのままのきみがすき

 翌日土曜日。

 休みなのを良いことに惰眠を貪り、ようやく覚醒したのはもうすぐ十時になるという頃。

 我ながら寝過ぎだと思うけれど、一人暮らしだからこんなに寝ていたって誰に咎められることもない。

 のそのそとベッドから這い出てカーテンを開けると、薄暗さに慣れていた目が一瞬眩むくらいの見事な秋晴れだった。

 適当に朝食を済ませて、面倒くさいと思いながらも溜め込んだ一週間分の洗濯物をなんとか午前中にやっつけて、同じく一週間分散らかった部屋も掃除する。

 午後はその反動でお気に入りのソファーに寝そべりながら、手の届く範囲に飲み物やお菓子、TVやエアコンのリモコンをスタンバイして録画したドラマを観たり、漫画や小説をひたすら読み耽ったりしてダラダラ過ごす。

 これが私の休日スタンダード。

 もちろん彼氏もいないし、好きな人もいない。特に恋愛をしたいとも思わない。

 私はたぶん、世間一般で言うところのいわゆる干物女に分類される人間だと思う。

 三年前、仕事で知り合い告白されて初めてお付き合いした三つ上の彼は、オフモードの私を見た時、ひどく残念そうな目を向けて言った。

 『君には騙されたよ』と。

 彼は家の中でも〝ちゃんとした格好〟で〝ちゃんとしている私〟を求めていた。

 それがわかっていたから、最初の頃は私もオフモードを封印していた。でも、彼を好きになればなるほど騙しているようで心苦しい。

 だけど勇気を出して曝け出した私に返ってきたその言葉は、私を容易く抉った。

 オフの姿を隠していることが騙していることになると思っていた私と、オフの姿を見せられたことで騙されていたと感じた彼。相容れなくなった私たちは、一年経つ頃にお別れをした。

 自堕落な休日を過ごしていた私がさて、そろそろスーパーに行くか、と重い腰を上げたのは、十六時を回った頃だった。

 眉だけは描いたけれど、その他は大きなセルフレームに誤魔化してもらって、夜にコンビニに行く時よりは幾分マシな身なりで家を出る。