「んー、寂しいけど、でも澄乃が肩肘張らずにいられる相手が職場にできたことは嬉しい、かな」

 その言葉がとても嬉しくて、私の顔がふにゃりと綻ぶ。

 「……だけど、職場でこんな風に無防備で隙だらけになられるのは困る」

 「え?」

 言われた途端、(おもむろ)に私のメガネが外され、彼のそれも外されて、こたつの上に仲良く並べて置かれる。

 それから後頭部を引き寄せられたかと思えば、柔らかなキスが降ってきた。それはやがてゆっくりと丁寧に深くなっていく。

 甘やかな空気が、お鍋から立ち上る湯気と混ざり合って溶け合う。

 「……ん、と、冬哉さん、お鍋がまだ途中……」

 「あっため直してまた後で食べよう。やっぱりすごく寂しいから、今はオレだけしか見られない可愛くて甘い澄乃を一人占めさせて?」

 キスの合間に何とかそう言った私に、艶麗な笑みを携えた彼が鼻を擦り合わせながら可愛くねだる。

 仕事をしている時は爽やかな王子なのに、オフモードの姿で見せてくれる色気たっぷりの顔も可愛い顔も、意外と独占欲の強いところも。

 「頑張った澄乃をたっぷり甘やかしたいんだ。……ダメ?」

 私が何かを頑張るたびにこうして甘やかしてくれるところも。


 「……そんなの、いいに決まってます……」



 そんなところも含めてぜんぶぜんぶ、

── そのままのきみがすき。



 -fin-