「……ふふ。はい。いつでも、どこででも」

 「……っ、ああー、ずっとこうしていたい。今から打ち合わせ、できる気がしない」

 私を腕の中に閉じ込めたまま真山さんがそう言った瞬間、ようやく打ち合わせのことを思い出した私はバッと顔を上げた。

 「そうでした、真山さん!そろそろ行かないと、時間がマズいです!……というか、今日、お二人は……?」

 「うん、置いてきちゃった。……ねぇ。今日の打ち合わせ、リスケしない?」 

 置いてきちゃった……?

 「いや、何言ってるんですか!そんなのダメに決まってるじゃないですか!」

 そんなに可愛く小首を傾げてねだっても、ダメなものはダメだ。仕事は仕事、ちゃんとしなくては。

 「ふはっ!それでこそ椿さん」

 そんなところも大好きです。彼の唇が弧を描いてそう紡いだ瞬間、それは今度、ちゅ、と私の唇に優しい熱を灯していった。ほんの一瞬のことだった。

 「じゃ、行こうか」

 それから私を解放した真山さんが、何事もなかったようにスタスタと歩いて行くから、私は慌てて後を追う。

 「……え?今……、ちょ、真山さん……!」

 真っ赤な顔の私を振り返った彼は、オンモードの姿でオフモードの時によく見せる少年のようにあどけない笑みを浮かべて言った。

 「今日、仕事が終わったら屋上集合、ね?」と。