ピアスが出てきてくれたタイミングが今で良かったなぁと、手の中にあるそれを見つめながら思う。

 金原さんとちゃんと向き合って終わらせられたことで、真山さんに真っ直ぐに向かっていく勇気が湧いたから。

 真山さんと朝宮さんの関係がどんなものだったとしても、きちんと気持ちは伝えよう、取り繕わずに全部。そう、思えたから。

 「……で、椿さんは彼と付き合って長いの?」

 せっかく買っておいてくれたチャイラテを、ひと口も口をつけずに去るのは申し訳ない。そう思ってすでに温くなったそれを勢いよく流し込んだ時、同じくコーヒーを口にしていた金原さんから飛び出したそのセリフに、私は吹き出しそうになった。

 「えっ⁉︎いやいや、付き合ってませんよ!」

 「え、そうなの?オレはてっきり、君たちはもうそういう関係なのかと」

 そうか。あの言い方だとそういう意味に取られてもおかしくはない。でも、 ……君たち……?

 「……えっ、と、誰のこと仰ってます?」

 明らかに特定の誰かを指している言い方に私が首を傾げた、その時。

 「── これから、そういう関係になれたらいいなと思っています」

 突然背後から凛とした声が聞こえて、ビクッとした。
  振り向くまでもなくその声だけで誰だかわかってしまう私は、もう重症すぎると思う。

 「……ま、まやま、さん……?」

 なぜここに……?このシチュエーション、既視感しかない……。

 まん丸になっている自覚のありすぎる私の瞳をちらりと見た真山さんの双眸からは、感情がまったく読めない。浮かべている笑みは王子そのものなのだけど、目が笑っていないからだろうか。