「さっき、エントランスでちょっと様子がおかしかったかなって。それで声掛けちゃったんですけど。それにミーティング中も、いつもと少し違う感じがして」
……ああ、何でこの人はわかったのだろう。それはきっと、とても些細な変化だったと思うのに。
「……オレの前ではクールビューティーの顔、取っ払っていいよ」
瞳を揺らす私にそう言って優艶な笑みを覗かせた彼は、
「オレも、椿さんの前では王子の顔、取っ払うから」
言い終わるや否や、徐に自分の前髪を乱した。重めの前髪が、さっきまではっきりと見えていた彼の垂れ目がちな瞳を覆う。
そして席を立ち私の傍らへやってきた彼は、私の方へゆっくりと手を伸ばす。それは一度私の頭の上に乗り、それからそっと下へおりて私の前髪を持ち上げた。
「うーん、おでこ全開にして、メガネがあれば完璧なんだけどなぁ」
そう戯けたように言われたことで、その行動の意図を知る。きっと彼は、私が曝け出しやすいようにそんなことをしてくれたのだ。飾らない、取り繕わないオフモードの姿になれば、素直な気持ちを言葉にしやすいだろうと。
── ああ、もうダメ。好きだ。私はこの人が、真山さんが好き。
急激に溢れてきた気持ちが喉元まで出かかって、慌てて飲み込んだ。
……ああ、何でこの人はわかったのだろう。それはきっと、とても些細な変化だったと思うのに。
「……オレの前ではクールビューティーの顔、取っ払っていいよ」
瞳を揺らす私にそう言って優艶な笑みを覗かせた彼は、
「オレも、椿さんの前では王子の顔、取っ払うから」
言い終わるや否や、徐に自分の前髪を乱した。重めの前髪が、さっきまではっきりと見えていた彼の垂れ目がちな瞳を覆う。
そして席を立ち私の傍らへやってきた彼は、私の方へゆっくりと手を伸ばす。それは一度私の頭の上に乗り、それからそっと下へおりて私の前髪を持ち上げた。
「うーん、おでこ全開にして、メガネがあれば完璧なんだけどなぁ」
そう戯けたように言われたことで、その行動の意図を知る。きっと彼は、私が曝け出しやすいようにそんなことをしてくれたのだ。飾らない、取り繕わないオフモードの姿になれば、素直な気持ちを言葉にしやすいだろうと。
── ああ、もうダメ。好きだ。私はこの人が、真山さんが好き。
急激に溢れてきた気持ちが喉元まで出かかって、慌てて飲み込んだ。



