今日は、実際にサーバーにアクセスして閲覧する際の動きなどを拝見させていただく日。仮にあつらえたサーバーにデータ一式をアップすることでそこから確認ができるらしく、私はその何もかもに感動していた。

 「すごい、動作がとてもスムーズですね」

 「うちのコーダーが優秀なので」

 「ええ、真山にはいつも無茶振りされて困ってます。人使いが荒くて」

 「人聞きの悪いこと言わないでください、朝宮さん」

 「こんなにこにこした笑み携えて、仕事では容赦ないですからね。椿さん、この笑顔に騙されちゃダメですよ」

 「は、はい……」

「何椿さんに余計なこと言ってるんですか」

「余計なことではありません、大事なことです」

「ああ言えばこう言う人ですね……」

 目の前で繰り広げられる二人のテンポの良い会話に、思わず苦笑が漏れた。

 webデザイナーが作成したデザインに基づいて、HTMLやCSSなどの様々な言語を使用しコードを書いていくコーダーの朝宮さんは、真山さんの一つ上だという。ボーイッシュなショートヘアにサバサバした性格の彼女は、真山さんととても仲が良さげ、だ。

 ちなみにアートディレクターの工藤さんは、開始十五分ほどで別件のトラブル対応で呼び出しが掛かってしまい、何かありましたらこの二人に何なりと!と、とても恐縮しながら勢いよく退出されていった。なので双方堅苦しくない、ちょっと砕けた雰囲気になっている。

 朝宮さんと接する時、何となくオンモードの中にも少しだけオフモードの真山さんが混じっている気がして、ちくりと胸が痛む。

 「椿さん、気になるところがあれば何でも仰ってくださいね」

 「……あ、はい……。ありがとうございます」

 切り替えた真山さんから向けられた綺麗な微笑みが、今日は寂しく感じてしまう。

 職場での真山さんは普段、こんな感じなのだろうか。それとも、朝宮さんの前でだけ?

 客先の真山さんでもなく、オフモードの真山さんでもない、職場での真山さん。私の知り得ない彼。

 ……あれ、おかしいな。今日はいつものクールビューティーが、繕えていないかもしれない。