「えっ……!……あっ、あの……っ!………ありがとうございます……」


 私は抵抗することを諦めて、両手でしっかり王子のお財布を握りしめたままエコバッグをぶら下げた王子を追いかけた。

 はい、王子のさりげない優しさ、いただきました……。

 それから、取引先の方相手に粗相をしてはならないという謎の緊張を抱えたままスタートした復路十分。(ネギのぶっ刺さったエコバッグを持ってもらい、この干物化した姿を晒している時点で十分粗相な気もするが、そこはもう気にしない……。)

 それは結論から言うとあっという間だった。

 私はただただ王子の投げてくれるボールを返すだけで良かったから。

 「椿さんは、毎回こんな買い込んで歩いて帰ってるんですか?」

 「……はい。今日はちょっと買い過ぎちゃいましたけど、次の日も休みだと思うと頑張れるので、大体土曜日に一週間分の食料の買い出しに行くんです。ちょくちょく買い出しするよりも経済的ですし」

 「それは偉いですね。でも一週間分の食料プラスビール一ケース持って十分は、なかなか大変そう」

 王子は両手に持っているエコバッグを軽く持ち上げてちらりと私を見やる。