「……お世話になっております。イヴェール・デザインの、真山です」


 ………………え、ちょっ、ちょっと待って…………?


 聞き覚えのある低くて滑らかな心地の良い声に、聞き覚えのあるその名前……。

 私は、今のヒントで思い浮かんだ記憶の中の彼を、目の前の、このモサーっとした髪に黒縁メガネのこの彼と重ねてみる。

 ……重ねてみるけどどうにも重なり切らない。

 でも……。

 〝あの人〟と今目の前にいる〝この人〟は、同一人物ってこと……?

 この人が、微笑みの王子ってこと……?


 「えええええええーーーーーー⁉︎」


 生まれて初めて出したんじゃないかってほどの私の大きな驚きの声が、秋の空に上って散った。