桐君はお兄ちゃんじゃない

 ショッピングモールの2階にあるレストランで昼食をとることにしました。


「……お父さんは、私のために、仕事を一生懸命してくれてたんだ」

「え……」


 急に始まった、楓果ちゃんの話。

 心の準備ができていなかったのですが、一言も聞き逃さないように、耳を傾けます。


「そのおかげで、家にいる時間は短かったけど、愛情深い人だった。そのお父さんが急に死んじゃって……私の心は空っぽになったみた
 いだった。
 それで、楓莉さんたちの家に行くことになって……まだ、1人ぼっちじゃないんだって……少し安心した」


 「でも……」と語りだす楓果ちゃんの声は震えていて、胸が締め付けられます。


「でも、もうそこには家族が出来上がっていて……1人だけよそ者私が……邪魔なんじゃないかって思った。
 楓莉さん、あの男と付き合ってるし……」

「なぜ、それを……」


 こんな時なのに、顔に熱が集まってしまいます。

 桐君のこと思い出したから……!


「そんな時に、楓莉さんが優しくしてくれて、お母さんも暖かくて……綾瀬さんも……。私を優しく迎えてくれた」