桐君はお兄ちゃんじゃない

 そんなことない、そんなことないよ……。

 そう思うのに、伝えたいのに……言葉が喉の奥につっかえて、出てきません。

 何で、私は……こんなにも弱いのでしょう……。


「……ばいばい」

「きっ……桐君……!」


 桐君は、振り返ってはくれませんでした。

 もう、私の声も、届いていないかのように……。

 ごめんね、桐君。

 私、何か間違えちゃったのかな……?

 そうだよね、きっと……。

 絶対に……そうなんだよね……。

 だって、そうじゃなかったら、君に……。

 そんな顔、させなくて済んだんだから。

 そんな姿、見なくて済んだんだから。

 そんなこと……言わせなくて良かったんだから。

 届かない、手を伸ばしても、声を出しても……。


 桐君、あなたは、どこに行ってしまうのでしょう……?