桐君はお兄ちゃんじゃない

 入学した当初は、「クールイケメン、って感じー♥」「実は一番美形なの、良き♥」と言われていたようです。
 
 しかし、その翌日、「綾瀬君って、彼女いるのー?」と聞いてきた女子に……

「それ、あんたに言う必要ある?」

 ……と、ものすごく睨みを利かせて言い放ち、途端に避けられるようになったのでした。


 今日も今日とて、綾瀬君は不機嫌。

 しかしながら、あまりにも顔と頭がいいわけで、女子は放っておけないようです。

 あんな、空気ガン無視発言されときながら、チラチラと綾瀬君の方を見やる、女子の気持ちが理解できません……。
 それと、誰ともいようとせず、わざわざ相手を傷つけるような言葉を使う、綾瀬君のことも……。

 とにかく、誰の気持ちも分からない私は、一生誰とも関わらずに生きていく、ということです。


 放課後、帰りの挨拶が終わった瞬間、教室から飛び出しました。

 あまり時間をかけていては、集団の中1人で帰ることになりますし、声をかけられる可能性も……。
 つまり、下校はスピード勝負ということです。

 今日、お母さん遅くなるって言ってたな……。
 醤油も切らしてたし、スーパー寄っていくか……。

 母子家庭の家は、お母さんが仕事で遅くなることも多く、そういう日は私がご飯を作っています。

 
 ……でも、それもあと少しで終わりそうです。

『ねえ、楓莉……』