桐君はお兄ちゃんじゃない

 ああ、終わりました。

 あの時同様、ゆっくりと近づいてくる人たち。

 今、走れば逃げれるかも……。

 いや、もう体力ギリギリですし……。

 綾瀬君を連れて帰らないと、意味が……。


「うわ!本当だ。超可愛いじゃん!」

「もー、桐。浮気かー?」

「は?別にお前と付き合ってねえし、こいつのことも、全然知らねえよ」


 え?

 綾瀬君の言葉に、少し、違和感を感じました。

 だって、綾瀬君。家で「同じクラス」って言ってたのに……何でこの人たちの前では、知らないふりするんですか?

 もしかして……心配してくれてるんですか?

 私が、この人たちと関わらずに済むように……あの「ごめんね」も、そういう意味だったんですか?

 逃げようと思っていた私の足は、途端に動かなくなってしまいました。


「あれー?固まっちゃって、どうしたの?」

「お兄さんが運んでやろうか?」