桐君はお兄ちゃんじゃない

「ふー……」


 夜の外の空気は、思ったよりも心地よく、安心感を覚えます……。

 とはいえ、綾瀬君の行きそうな場所、私には思い当たりません。

 どうしたものか……。

 ……。

 どうしましょう。本当にどうしましょう。

 何も思いつかないのですが、冗談抜きで。

 仕方がありません。何か、ガラの悪い人たちが溜まっていそうなところを探してみましょう。

 例えば……あのガラの悪い人と綾瀬君と遭遇した場所……。

 あ、そういえば、あそこの近くに、使われていない倉庫があったような……。


「っ……!」


 気づいたら、走り出していました。

 今、綾瀬君の近くに行かないと、手遅れな気がして。

 いや、もう手遅れでしょうけど、でも……ね?

 本当は、二度と行きたくない場所でしたけど……。

 これも、お母さんの幸せのため……幸せのためですから。