桐君はお兄ちゃんじゃない

 なぜ、私がお母さんにこんな嘘を……。

 というか、綾瀬君はこんな時間まで何を……。


「ごちそうさまでした」


 自分の食器を洗い終えて、そーっと玄関に向かいます。

 こうなったら、探してみるしかありません……!

 いや、本当は絶対に関わりたくないんですけど……。

 お母さんたちにバレるのも時間の問題ですし……。

 なんとか説得してみるのがいいかなーと思っただけで……。

 まあ、心の中でいくら言い訳をしても、誰も聞いてはくれないのですが……。

 お母さんたちの部屋は1階にあるので、音をたてないように細心の注意を払います。


〈チャ〉

「はー……」


 何とか、家からの脱出に成功しました。

 〈ガチャ〉となるはずのドアを、〈チャ〉と閉めた私、才能あるんじゃないでしょうか。

 いや、何の才能?といった感じなんですけど……。