桐君はお兄ちゃんじゃない

「母は、いつも、私のために頑張ってくれていました。私が生まれてすぐに離婚して、ずっと、大変だったと思います」


 綾瀬君の沈黙が怖くて、思わず下を向いてしまいました。


「そんな母が、ようやく、幸せになれる人を見つけたみたいなんです。だから……」

「どうか母を、幸せにしてください……?」


 私の言葉を先読みしたように、そう言った綾瀬君。


「……はい。そうです……」

「……くだらな」

「え?」


 な、なんだか今、ひどい言葉が聞こえたような……?

 今、ものすごくいい雰囲気だった気がするのですが……?


「いい人ごっこも大概にしろよ」

「……はい?」

「もういい、出てって」


 その言葉を最後に、〈バタン〉と閉められたドア。