桐君はお兄ちゃんじゃない

 何とか、2階の綾瀬君の部屋まで案内できました。


「ここの部屋は、好きに使っていただいて構いません。私の部屋は隣ですので、何かあったら言ってください。では……」

「ねえ、ちょっと待って」


 ギクッと肩が震えました。

 あ、あと少しで、逃げれるところだったのに……!


「あんたさ、俺に聞きたいこと、無いの?」

「聞きたいこと、ですか?」


 真面目な雰囲気に、一瞬戸惑いましたが、予想外の返事で、安心しました。


「聞きたいこと……特にありません。あ、でも……」

「何?」


 1つだけ、どうしても守ってもらいたいものが、あります。


「どうか、私の母を、幸せにしてください」

「……は?」


 ドスの効いた低い声に、怯んでしまいそうです。でも……。