入学式の日、俺もあいつもすっかり緊張しちまって信じられないくらい誰とも話せなかった。
クラスにはお互いに知ってるやつも何人か居たのにまったく話せなくて、、、。
 授業が始まった日、茂之は思い切り遅刻した。 なんでも目覚ましを掛け忘れてたんだそうで。
クラスの女たちには冷たい目で見られてたっけなあ。 可哀そうなくらいにさ。
 中でも橋本里沙は学級委員だからか事有るごとに「本田君みたいに目覚ましの掛け忘れはしないようにね。」って言うもんだからみんなから退かれてたけど。
「おいおい、里沙ちゃん それは無いだろう?」 「いいの。 これくらい言っとかないとまた遅刻するから。」
「だからって子供じゃないんだぜ。」 「だからって大人でもないでしょう?」
「そりゃそうだけどさあ、、、。」 「私の勝ちね。」
 何も言えなくなった俺を見て里沙は得意そうに笑ったっけ。 あれももう3年前なんだなあ。
バイクが通り過ぎていった。 茂之がバイクに乗るようになったのは2年生の時だ。 夏休みには嬉しそうに乗ってたっけなあ。
 「学校には乗って行かないのか?」って聞いたら「こいつは家で楽しむんだ。」って言ってた。
特に見せびらかすでもなく自慢するでもなく休みの日に飛ばしてたんだよな。 案外地味なやつだった。
 いつだったかバイクに乗ってたら族の連中に絡まれそうになったって言ってたな。 この辺で走り回ってるやつらだった。
でもさあ、あいつ軽く交わして逃げたってさ。 よっぽどにどんくさかったのかなあ?
 お前はどうなんだって? 俺はバイクも車も乗らない。
乗りたいって思わないんだ。 興味無いからさ。
 茂之は「いつか車を買いたい。」って言ってたよ。 86かフェアレディーだって言ってたな。
仕事して金を貯めて自分で買うんだって。 俺には無理無理。