高校前からバスに乗る。 高島町へ向かうバスに乗るのは俺だけ。
ついこの間まで俺の前か後ろには茂之が座っていた。 そして二人で取り留めの無い話をしていたっけ。
清水町、ここにはあいつの姉さんが住んでいる。 去年、大学を卒業して市役所に就職したんだそうだ。
その一つ下に兄さんが居てこの人が俺の姉さんと友達なんだ。 保育園が見えるね。
茂之が居たらどんな話をしただろうなあ? あいつが生まれた頃、母さんは離婚してすぐだった。
だからあいつは保育園に預けられたんだ。 上の二人とはどっか違うような気がするって言ってたな。
重森駅前。 この辺には母さんが働いている肉屋が在るはず。 俺も時々「バイトしねえか?」って誘われた肉屋だ。
だから特売日とかいう特別に忙しい日だけバイトさせてもらったもんだ。 でも忙しかったなあ。
牛筋なんかその日には飛ぶように売れるから捌くのが大変だった。 親父さんに教えてもらいながら包丁も使わせてもらったよ。
そこを過ぎるとアジサイ学園前。 中高一貫の女子高だ。
なんとなんと姉さんの通っていた学校だ。 けっこう偏差値高いんだぜ。
賄賂でも渡してたのかな? そんなことは無いだろうけど、、、。
アジサイ学園前を過ぎると港町3丁目。 ここからけっこう行くと芦川漁港が見えてくる。 そうそう港町なんだよ。
この辺りから風景がどんどん変わっていく。 左側には工場も見えてくるし、右側には鉄道も見えてくる。
ここからしばらく行くと橋本平って所に着く。 そう、茂之が死んだ丘の真ん中だ。
「次は橋本平。 お降りの方はお知らせください。」
降りるかどうか迷いはしたが折角の卒業式だ。 茂之と楽しくやってた頃のことをじっくりと思い出すのもいいだろう。 そう思って降車ボタンを押した。
まだまだ太陽も頭の上だ。 やつと来ていた頃は決まって夕日が沈みかけている時だった。
でも何でここだったんだろう? 他にもいい所はたくさん有ったはずなのに。
あいつが振られた話も聞いたよな。 「気にすんなって。 この世の中には腐るほどたっくさん居るんだぜ。 数千億分の1の失敗じゃねえか。」
もともと恋ネタには興味も関心も無かった俺だからそう言って励ましてるのかどうか分からない激励をしてたっけなあ。
遠くに目をやると港がチラッと見えるんだ。 「海だぜ。 いいじゃない。 女なんてなあその気になれば捉まるもんだよ。」
なんて出来もしないことを言ったもんだ。 そうしながら二人で沈んでいく夕日を追い掛ける。
夕日に向かって走りそうにもなるけど走ったら丘から転げ落ちるからなあ。 骨を折るくらいじゃ済まないぜ ここ。
今日もあの日のようにぼんやりとここに立つ。 茂之の写真を掲げてみる。
「見えるか? お前とよく来た丘だぜ。」 取り合えずガードレールも設置されてはいるがかなり錆びていて見るのもおっかない。
道路をひっきりなしに車が走って行く。 バスも何代目だろう?
重森長がクロスポイントになっているからか本数は多いんだよなあ。 たまに乗るバスを間違えて焦るくらいだから。
ここは緩いカーブになっていてレース好きな連中がスリルを楽しむために危ないくらいに吹かすんだよな。 見たことは有るけどおっかなくて、、、。
ヘアピンでもないのに転んで大ケガをするやつも居るんだからな。 まったく、、、。
俺と茂之が初めて会ったのは高校に入ってからだった。 それまであいつと会ったことは無かった。
お互いに不器用でさ、チョコンと頭を下げただけだった。 初めて話したのはバスの中だったな。
あいつが寝過ごしちまって俺んちの近くで降りた時のことだった。 「えーーーー? 何処なんだよ?」
バス停の前で狼狽えてるもんだからしっかり説明して20分後に来るバスに乗れば近くまで行けるよって教えたんだ。
以来、あれやこれやと相談してくるようになった茂之と連れ立って歩き回るようになった。 そんな茂之が死んだんだ。
あいつが倒れていた辺りには今も花が手向けられている。 姉ちゃんも毎日来てるって言ってたな。
あいつを吹き飛ばしたのはレースに夢中になっていた高校生だった。 捉まった時、「バイクが飛び出してきたんだ。」ってほざいたらしい。
でもドラレコにちゃんと映されていた。 逃げようが無かった。
あいつは何を思っただろう? 何もかも夢で終わっちまったんだ。
どっかでサイレンが聞こえる。 昼休み終了のサイレンかな?
先のほうには工場も建ってるからね。 見学したことは無いけど。
ついこの間まで俺の前か後ろには茂之が座っていた。 そして二人で取り留めの無い話をしていたっけ。
清水町、ここにはあいつの姉さんが住んでいる。 去年、大学を卒業して市役所に就職したんだそうだ。
その一つ下に兄さんが居てこの人が俺の姉さんと友達なんだ。 保育園が見えるね。
茂之が居たらどんな話をしただろうなあ? あいつが生まれた頃、母さんは離婚してすぐだった。
だからあいつは保育園に預けられたんだ。 上の二人とはどっか違うような気がするって言ってたな。
重森駅前。 この辺には母さんが働いている肉屋が在るはず。 俺も時々「バイトしねえか?」って誘われた肉屋だ。
だから特売日とかいう特別に忙しい日だけバイトさせてもらったもんだ。 でも忙しかったなあ。
牛筋なんかその日には飛ぶように売れるから捌くのが大変だった。 親父さんに教えてもらいながら包丁も使わせてもらったよ。
そこを過ぎるとアジサイ学園前。 中高一貫の女子高だ。
なんとなんと姉さんの通っていた学校だ。 けっこう偏差値高いんだぜ。
賄賂でも渡してたのかな? そんなことは無いだろうけど、、、。
アジサイ学園前を過ぎると港町3丁目。 ここからけっこう行くと芦川漁港が見えてくる。 そうそう港町なんだよ。
この辺りから風景がどんどん変わっていく。 左側には工場も見えてくるし、右側には鉄道も見えてくる。
ここからしばらく行くと橋本平って所に着く。 そう、茂之が死んだ丘の真ん中だ。
「次は橋本平。 お降りの方はお知らせください。」
降りるかどうか迷いはしたが折角の卒業式だ。 茂之と楽しくやってた頃のことをじっくりと思い出すのもいいだろう。 そう思って降車ボタンを押した。
まだまだ太陽も頭の上だ。 やつと来ていた頃は決まって夕日が沈みかけている時だった。
でも何でここだったんだろう? 他にもいい所はたくさん有ったはずなのに。
あいつが振られた話も聞いたよな。 「気にすんなって。 この世の中には腐るほどたっくさん居るんだぜ。 数千億分の1の失敗じゃねえか。」
もともと恋ネタには興味も関心も無かった俺だからそう言って励ましてるのかどうか分からない激励をしてたっけなあ。
遠くに目をやると港がチラッと見えるんだ。 「海だぜ。 いいじゃない。 女なんてなあその気になれば捉まるもんだよ。」
なんて出来もしないことを言ったもんだ。 そうしながら二人で沈んでいく夕日を追い掛ける。
夕日に向かって走りそうにもなるけど走ったら丘から転げ落ちるからなあ。 骨を折るくらいじゃ済まないぜ ここ。
今日もあの日のようにぼんやりとここに立つ。 茂之の写真を掲げてみる。
「見えるか? お前とよく来た丘だぜ。」 取り合えずガードレールも設置されてはいるがかなり錆びていて見るのもおっかない。
道路をひっきりなしに車が走って行く。 バスも何代目だろう?
重森長がクロスポイントになっているからか本数は多いんだよなあ。 たまに乗るバスを間違えて焦るくらいだから。
ここは緩いカーブになっていてレース好きな連中がスリルを楽しむために危ないくらいに吹かすんだよな。 見たことは有るけどおっかなくて、、、。
ヘアピンでもないのに転んで大ケガをするやつも居るんだからな。 まったく、、、。
俺と茂之が初めて会ったのは高校に入ってからだった。 それまであいつと会ったことは無かった。
お互いに不器用でさ、チョコンと頭を下げただけだった。 初めて話したのはバスの中だったな。
あいつが寝過ごしちまって俺んちの近くで降りた時のことだった。 「えーーーー? 何処なんだよ?」
バス停の前で狼狽えてるもんだからしっかり説明して20分後に来るバスに乗れば近くまで行けるよって教えたんだ。
以来、あれやこれやと相談してくるようになった茂之と連れ立って歩き回るようになった。 そんな茂之が死んだんだ。
あいつが倒れていた辺りには今も花が手向けられている。 姉ちゃんも毎日来てるって言ってたな。
あいつを吹き飛ばしたのはレースに夢中になっていた高校生だった。 捉まった時、「バイクが飛び出してきたんだ。」ってほざいたらしい。
でもドラレコにちゃんと映されていた。 逃げようが無かった。
あいつは何を思っただろう? 何もかも夢で終わっちまったんだ。
どっかでサイレンが聞こえる。 昼休み終了のサイレンかな?
先のほうには工場も建ってるからね。 見学したことは無いけど。



