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「おはよう」
「おはっ……!?」
教室へ入ってすぐ、ガタンッ、と私を見るなり椅子を思いきり倒し、翠花は泣きそうな顔でこちらへやって来た。
「一悠!髪……伸ばすんじゃなかったの?」
「あー……そう思ってんだけど、やっぱりいいかなぁなんて」
「一悠……」
──誤魔化しはきかない、か。
夏っていう理由も単純にあったけど、男装をつらぬくため、動くためには、中途半端では暑いし気になる。
だから私は、肩にかかっていた髪を少し切った。
切るか迷ったけど……。
私が髪を伸ばすと知っていた翠花には、よく思われないと分かっていた。でも、切った方が気が引き締まって、しっくりくるの。
案の定、"何かあったんでしょ?"そう言いたげな顔をされるも、とある不良チームに仲間入りするんだ、なんて言ってしまえば確実に泣かせてしまう気がして。
でも、翠花は言わなくてもきっと分かってくれる。私が、どんなやり方で取り返そうとしているか言葉にしなくても。



