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『翠花、元気ないね』『おばあちゃんの形見なくしちゃったらしくて』
教室では、未だ浮かない翠花の様子を気にかける子たちがいて。翠花は表向き笑ってるけど、全然笑えてないのが分かる。
──翠花……。
なくしても身近に売ってる物なら、替えはきく。
だけど形見の物は、替えがきかない。
お守りなのだと持ち歩いていたペンダント。
とびきり優しく、穏やかなお祖母さんからもらったのだと何度も聞いてきた。
翠花がペンダントを握る手も瞳もいつも優しく、どれだけ大切な物なのかを私なりに理解しているつもり。
過去にも一度、ペンダントではないけど翠花は似たような目にあっているから。
──中学に上がる少し前のある日、D区の河原で翠花が不良くんたちに囲まれているところを、ショッピングモールの上から見つけたのが私。
とは言っても、程よく遠かった。
それでも、翠花が嫌がっていたことだけはしっかりと見えて。
"D区には行ってはだめ"──そうお母さんたちに口酸っぱく言われてきてたのに、D区へと走り足を踏み入れた。



