男装バレしてないのに距離はバグってます


「こっちの治安の悪さを知らないわけじゃないだろ。今日は少なかったかもしれないが、どこもかしかもどっかの連中がたむろし、目が合えば喧嘩が始まるような場所で、一人歩きすればどうなるか……」
「要するに……一人で歩けば、カモになると?」

聞けば、肯定するようにまた口角を上げられ、ため息がこぼれる。
それは承知の上でD区に足をふみ入れたけど、本当にいちいち喧嘩をふっかけられては探すのに手間がかかってしまう。

「もしそうだとしても、あいにく仲間はいなくてね」
「だろうな。一人でこの区を歩く物好きはそうそういない。腕に多少なりとも自信はあるようだが、男一人でD区を歩くのはきついぞ」
「でもわた──」


私、と言いかけてふと思った。
『私』と言えば女だとなめられはしないか?と。
女子を理由に喧嘩を持ちかけられても困る。
だけど今は幸いにも髪が特別長いわけでもスカート姿でもない。