お家の中は色とりどりの花と木の実で飾られ、たくさんの森の動物たちがダンスを踊り、ご馳走をテーブルに並べている。
蝶ネクタイをした小粋なキツネがテナーサックスを吹き、太ったフクロウが頭のうぶ毛を逆立てながら激しくドラムセットを叩き、にぎやかな音楽が流れていた。
みんなニコニコしてとっても楽しそうだ。
「あ!パパ!どうしたの?戦隊シリーズのリーダーみたいに、熱血に現場に飛び込んできたりして?」
「赤ずきんちゃん!レッドなのはお前もお父さんと同じだよ!」
室内に飛び込んだパパの視線の先には、手をつないでおばあちゃんとダンスを踊っていた赤ずきんちゃんが、こちらをキョトンとした顔で見つめている姿だった。
「迎えに来てくれたの?ごめんね、帰りが遅くなって。でも、森の動物さんたちがとっても良くしてくれて、おばあちゃんの病気もすっかり良くなったのよ!」
赤ずきんちゃんは太陽のような眩しい笑顔で、父に答えた。
「そう言えばしばらく見ない間にお肌もツルツルすべすべになって……。赤ずきんちゃん、最近キレイになった?」
「まあ!イヤだね、この子ったら自分の娘にお上手なんか言って!」
「あうッ!痛い!」
その時、パパの背中をバシンッ!と、つんのめるほど叩いたのは、赤ずきんちゃんのおばあちゃんだった。
「お、おばあちゃん……。ご無沙汰しております。このたびは病気平癒、誠におめでとうございます」
パパは派手に咳き込みながらも、緊張気味におばあちゃんに最敬礼した。
「ハイ、ありがとう。赤ずきんちゃんと森の動物たちが一生懸命に看病してくれてねぇ。すっかり元気になったものだから、今日はみんなで快気祝いのパーティを開らくところだったのよ。私も明日からコミセンでサークル活動のブラスバンドに復帰して、トロンボーンを吹くのよ!」
「おばあちゃんは若い頃から、肺活量がハンパなかったですからね」
パパは豪快に笑うおばあちゃんに、心底感心しながらうなずいた。
「あのね、パパ。私もおばあちゃんも銭湯鶴亀のお湯でお肌もツルツルピカピカになったの!それに森の動物さんたちのお世話をしていたら、みんな私のことをとっても頼りにしてくれるのよ!!それでね、あの……もう少しだけおばあちゃんのお家にいてもいいでしょう!?私がいなくなると誰も動物さんたちの手当てをする人がいないの!」
赤ずきんちゃんは、ウルウルとうるんだ瞳でパパを見上げた。
「そうさせておやりよ……。赤ずきんちゃんも父親の世話と家事に明けくれるだけの人生に、生きがいを探しているんだよ」
おばあちゃんも、赤ずきんちゃんの肩を抱き、そっと口添えしてくれる。
「他人《ひと》から必要とされることが人間の生きがいとなる――――。活き活きした赤ずきんちゃんの顔を見ていたら、わかるような気がします」
「それじゃあ、パパ?」
「赤ずきんちゃんの思う通りにしなさい」
「さすが、我が息子!よく言ったよ!!」
感激した赤ずきんちゃんがパパに飛びつく前に、またもや、パパの背中をべしべし!叩くおばあちゃん。
パパは勢い余って、床につんのめる。
「そう言えばお前、初めてなのによく私の家がわかったね?誰に聞いたの?」
おばあちゃんが床に両手をついて、ごほごほ咳き込んでいるパパに、不思議そうに尋ねた。
「ハッ!そう言えばすっかり狼くんを忘れていた。おお~い!狼く~ん!君も一緒にパーティを楽しまないか?ハハ!ずいぶん恥ずかしがり屋さんだな?道案内が終わったらもう帰ってしまったのかい?」
すっかりご機嫌になったパパは、外にいる狼に陽気に呼びかけた。
一方、パパに突き飛ばされてうつ伏せに倒れたままだった狼くんは……。
「助けに行くぞって、パパ様は一体誰と戦うつもりだったのか……。ボクも早く、赤ずきんちゃんに手当てしてほしい……ガクッ……!」
ついに力尽きてしまった狼くんは、ピンクの花冠をかぶったまま、家の入り口で気絶してしまった。
蝶ネクタイをした小粋なキツネがテナーサックスを吹き、太ったフクロウが頭のうぶ毛を逆立てながら激しくドラムセットを叩き、にぎやかな音楽が流れていた。
みんなニコニコしてとっても楽しそうだ。
「あ!パパ!どうしたの?戦隊シリーズのリーダーみたいに、熱血に現場に飛び込んできたりして?」
「赤ずきんちゃん!レッドなのはお前もお父さんと同じだよ!」
室内に飛び込んだパパの視線の先には、手をつないでおばあちゃんとダンスを踊っていた赤ずきんちゃんが、こちらをキョトンとした顔で見つめている姿だった。
「迎えに来てくれたの?ごめんね、帰りが遅くなって。でも、森の動物さんたちがとっても良くしてくれて、おばあちゃんの病気もすっかり良くなったのよ!」
赤ずきんちゃんは太陽のような眩しい笑顔で、父に答えた。
「そう言えばしばらく見ない間にお肌もツルツルすべすべになって……。赤ずきんちゃん、最近キレイになった?」
「まあ!イヤだね、この子ったら自分の娘にお上手なんか言って!」
「あうッ!痛い!」
その時、パパの背中をバシンッ!と、つんのめるほど叩いたのは、赤ずきんちゃんのおばあちゃんだった。
「お、おばあちゃん……。ご無沙汰しております。このたびは病気平癒、誠におめでとうございます」
パパは派手に咳き込みながらも、緊張気味におばあちゃんに最敬礼した。
「ハイ、ありがとう。赤ずきんちゃんと森の動物たちが一生懸命に看病してくれてねぇ。すっかり元気になったものだから、今日はみんなで快気祝いのパーティを開らくところだったのよ。私も明日からコミセンでサークル活動のブラスバンドに復帰して、トロンボーンを吹くのよ!」
「おばあちゃんは若い頃から、肺活量がハンパなかったですからね」
パパは豪快に笑うおばあちゃんに、心底感心しながらうなずいた。
「あのね、パパ。私もおばあちゃんも銭湯鶴亀のお湯でお肌もツルツルピカピカになったの!それに森の動物さんたちのお世話をしていたら、みんな私のことをとっても頼りにしてくれるのよ!!それでね、あの……もう少しだけおばあちゃんのお家にいてもいいでしょう!?私がいなくなると誰も動物さんたちの手当てをする人がいないの!」
赤ずきんちゃんは、ウルウルとうるんだ瞳でパパを見上げた。
「そうさせておやりよ……。赤ずきんちゃんも父親の世話と家事に明けくれるだけの人生に、生きがいを探しているんだよ」
おばあちゃんも、赤ずきんちゃんの肩を抱き、そっと口添えしてくれる。
「他人《ひと》から必要とされることが人間の生きがいとなる――――。活き活きした赤ずきんちゃんの顔を見ていたら、わかるような気がします」
「それじゃあ、パパ?」
「赤ずきんちゃんの思う通りにしなさい」
「さすが、我が息子!よく言ったよ!!」
感激した赤ずきんちゃんがパパに飛びつく前に、またもや、パパの背中をべしべし!叩くおばあちゃん。
パパは勢い余って、床につんのめる。
「そう言えばお前、初めてなのによく私の家がわかったね?誰に聞いたの?」
おばあちゃんが床に両手をついて、ごほごほ咳き込んでいるパパに、不思議そうに尋ねた。
「ハッ!そう言えばすっかり狼くんを忘れていた。おお~い!狼く~ん!君も一緒にパーティを楽しまないか?ハハ!ずいぶん恥ずかしがり屋さんだな?道案内が終わったらもう帰ってしまったのかい?」
すっかりご機嫌になったパパは、外にいる狼に陽気に呼びかけた。
一方、パパに突き飛ばされてうつ伏せに倒れたままだった狼くんは……。
「助けに行くぞって、パパ様は一体誰と戦うつもりだったのか……。ボクも早く、赤ずきんちゃんに手当てしてほしい……ガクッ……!」
ついに力尽きてしまった狼くんは、ピンクの花冠をかぶったまま、家の入り口で気絶してしまった。



